人々の暮らしを守る社会貢献の視点で自動運転移動サービスの実装に取り組む
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CHALLENGE
目の前に迫る少子高齢化の進行によるドライバー不足と交通インフラ崩壊の荒波を乗り越える
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の蔓延、ウクライナ・ロシア情勢の悪化など、様々な危機が世界中を襲いました。それらの対策が進む中、従来から問題視されてきた課題は更に深刻化しています。そのひとつが、ドライバー不足。2023年現在、有効求人倍率が2倍を超えるなど、運送や交通の各社が求人を続けていますが、一向にドライバー不足が解消する目処は立っていません。経済産業省によると、2030年には輸送需要の9.5%(5.4億トン)が不足するという予測が出ています。
また、少子高齢化においては、2023年現在の高齢化率は内閣府のデータによると28.4%。約40年後までに65歳以上人口はほぼ横ばいで推移する一方で、20歳から64歳の人口は大幅に減少し、高齢化率は約10%程度上昇することが予測されています。特に地方部においては、免許返納などが進み、自家用車での移動に依存している地域では移動が困難になる危機を迎えています。
これらの課題を解決する代表的なテクノロジーのひとつが自動運転移動サービスです。
SOLUTION
Case1:「歩車共存空間での走行」「時速40km程度での公道走行」を東京都内で実現

東京都では、2018年から自動運転移動サービスの実装に向けた取り組みを開始しています。当初は、都内の様々な場所で実証実験を行う計画が立てられていましたが、近年は諸条件を勘案して西新宿と臨海副都心に地点を集約。毎年、メディアも注目する規模で実証実験を行ってきました。
この東京都の自動運転移動サービスの取り組みに、日本工営は事業プロモーターとして参画。都有地での自動運転移動サービスの活用方法を民間事業者から広く提案を求めるサウンディングと公募、優れたプロジェクトを選定するための有識者委員会の設置と運営、選定されたプロジェクトの事業者と契約して実証実験を実施するなど、総合的な知見をフルに活かして自動運転移動サービスの社会実装を目指しています。
直近の実証実験は、2023年1月下旬から2月中旬までの期間に江東区の臨海副都心で行いました。今年度、東京都から求められたのは、2021年度に公園内で実現していた歩車分離での運行を、歩車共存の環境下で成功させること。これまでは運行ルートをフェンスで区切って歩行者との交錯を防ぎ、安全性を確保していましたが、2022年度はフェンス類をなくし、歩行者が自由に通行する環境の中での運行を成功させました。一般の体験乗車も盛況で、「驚くほどスムーズ!」「高い安全性を実感できた」などの声を獲得。また、公道においては警視庁などすべての関係機関の許可を得た上で、時速40km程度での自動運転バスの運行を実現しました。メディアでも大きく取り上げられるなど、各方面から高い評価を獲得しています。
2023年度には、更なる安全性や技術的な課題の解決に加え、運行ルートの拡張、事業性や社会の需要性の検証を実施。2025年度内の社会実装を目指していきます。
Case2:栃木県内で早急な社会実装を見据えた実証実験を次々と実施

少子高齢化が進む栃木県では、自動運転を暮らしの維持に必要な技術のひとつと位置付け、実装を目指しています。栃木県の特徴は、ドライバーの減少や免許の返納が首都圏の中でも顕著に見られること。そのため、公共交通における自動運転は、将来にわたり人々が安心して暮らす社会づくりに欠かせない技術と、多くの県民が認識し始めています。そこで栃木県では県内で10か所の実証実験を行う計画を2020年に策定。市街地、観光地、中山間地のそれぞれのロケーションに適した自動運転車両を用いた実験を実施し続けています。
2022年度での実績は、『いちご一会とちぎ国体』の競技場と最寄駅を結ぶルートで自動運転の実証実験を実施したことです。イベントの移動手段として、期間中に3200人を超す人が自動運転バスに乗車。こちらも東京都の臨海副都心と同種の車種を用い、時速40km程度での運行を行いました。その他にも、過去には新幹線駅がある小山駅近郊での実証実験も行い、走行時の安全性についての検証はもちろん、自動走行ができず手動走行に切り替わった箇所のデータや一般乗客が感じた運賃の適正価格など、様々な種類のデータを取得しています。これらの情報を総合的な知見から整理し、課題を抽出することで実装への動きを更に加速させていきます。
2023年度は、2025年度までの社会実装に向けた大切な一年。最初に実現を目指す路線を確定し、日本工営の独自の視点も盛り込んだ提案を行うとともに、より具体的な実証実験を進めていきます。
POINT
「走行の実現」と「実装」の大きな違いを知る企業として国難に立ち向かう
自動運転には様々な最新技術が搭載され、夢の技術と言われています。国や多くの都道府県は2025年までの実装を目指し、まさに実現が間近に迫っている時期。今、求められているのは、安全に走行する技術の開発だけではなく、運行の制度づくり、運行計画の策定や収益化など、日本の法律に適合しながら路線を持続可能なかたちで維持するための視点です。
日本工営では、交通都市部を中心に公共交通の運行計画の策定、渋滞や事故の対策、物流の効率化等の計画策定など、日本国内だけではなく世界規模で交通や都市の課題解決に取り組んできました。また、自動運転と親和性が高いスマートシティやMaaSなどの計画策定や導入を行う業務にも活動を広げており、自動運転移動サービスとその発展に必要な体制を自社だけでも兼ね備えています。
その日本工営が考える自動運転移動サービスの原点とは、公共交通の最適化により人々の豊かさと幸せに貢献すること。ほとんどの人にとって、移動は、そのものを目的とした根源的需要ではなく、他の目的に付随して発生する派生的需要であり、できることなら移動時間を減らして本来の目的に費やす時間を増やしたいものです。生活の質の向上とは何かを常に考えながら、これからも私たちは社会貢献を軸に、自動運転移動サービスの実装を目指していきます。