北海道の産業と生活を守る『夕張シューパロダム』プロジェクト
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2015年に完成した夕張シューパロダムは、北海道の夕張川の上流に位置する再開発による重力式コンクリート形式による多目的ダムです。ダムの高さは110.6m、横幅は390mに達し、国内第2位の湛水面積(15平方キロメートル)、国内第4位の貯水容量(4.27億立方メートル)を誇ります。日本工営はこのダム建設にコンサルタントとして参加。地質の分析、堤体コンクリート材料の検討、基礎処理設計、地すべり対策などを通じて貢献しました。
洪水被害をきっかけに、多目的ダムとして誕生した『夕張シューパロダム』
夕張シューパロダムは、夕張メロンの産地として知られる夕張川流域の上流に位置する多目的ダムです。現在の夕張シューパロダムがある場所から155m上流には、1963年から約50年間、電力と農業用水の供給源として活躍した大夕張ダムが湖底に水没し、眠っています。この大夕張ダムが現役だった1980年当時、ダムの高さを67.5mから13.3mかさ上げし、高まる農業用水需要をまかなうという計画が持ち上がりました。しかし翌年に北海道を襲った台風12号による洪水被害がその計画を白紙に戻します。従来の大夕張ダムにも、当時計画中の新たなダムにも、洪水調節機能を持っていなかったからです。そこで高い治水機能を持ち、今後増加が見込まれる水道や電力需要にも応えうる多目的ダムが構想されました。そして誕生したのが、2015年に竣工した夕張シューパロダムだったのです。


複雑さを極める地質構造と格闘した日本工営の技術者たち

新たなダムを建設するにあたって、最初に乗り越えなければならない課題は建設地の選定です。まずは建設候補地がダムの重量と貯水の圧力に耐えうる地質であるかどうかを調べる必要があります。日本工営は対象となるエリアを30m四方ごとに区切り、約100カ所の地点でボーリング調査を実施。ダムの高さと同程度の地下100mまでボーリングを掘り下げ、高さ100mを超えるダムが建設可能で経済的な場所を探りました。調べてみるとダム建設予定地の地質は非常に込み入った構造で、古い地層と新しい地層が逆転している箇所や、数千万年前の古い断層、また水を通しやすい地質と通さない地質が複雑に入り交じっていることがわかりました。日本工営の技術者たちは、ボーリング調査で採取した数万メートル分の地質試料をもとに地質を分析。詳細な地質構造図を描き、工事発注機関と議論を重ね、ベストなダム位置の選定に取り組みました。現在、夕張シューパロダムがある位置に決定するまでに要した期間は約10年。大夕張ダムを利用しながら建設工事が可能であり、なおかつ大規模なダムを建設できる地盤を選定するのは容易なことではありませんでした。地中の見えない地質構造を限られたデータから見極めるために、日本工営の技術者たちの技術と経験、そして豊かな想像力が活かされたのです。
さまざまな業務を担当して得た、かけがえのないノウハウ
夕張シューパロダム建設プロジェクトで、日本工営が関わったのは地質の分析調査だけではありませんでした。ダム本体コンクリートに用いる骨材用の原石とコンクリートの配合を工夫し、一定の品質と経済性を備えたコンクリートを製造するための工法を確立したほか、地すべりが懸念される箇所への調査と対策の提案、ダム完成後に水没してしまう道路や橋を新たな場所に付け替える計画策定など、ダム建設にまつわるさまざまな業務を担当。多くの課題と向き合いました。固く安定した地盤が想定したよりも深い場所にあり、掘削に時間を要したことなど、不測の事態に遭遇したこともありました。しかしその都度日本工営の技術者たちは課題に取組み、対応策を提示して問題解決を図ったのです。このプロジェクトは日本工営にとって、優れた技術者を多数輩出したプロジェクトでもありました。夕張シューパロダム建設で得られたノウハウの数々は、これからのダム建設にも大いに活かされることになります。
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