特集 災害に強い持続可能な社会の実現

ID&Eグループは、長年にわたり災害対応の最前線で技術と知見を磨き続けてきました。専門技術者 による現場対応、国内外160か国に広がるネットワーク、そして東京海上グループとの連携による保険と技術の融合──今後も災害に強く、安全・安心な社会の実現に貢献します。

対談 災害レジリエンスが拓くサステナビリティの未来

対談

PROFILE

  • ID&Eホールディングス株式会社 執行役員 経営戦略本部長

    炭田英俊(すみた ひでとし)

    流域水管理事業副本部長、事業戦略本部長などを歴任。現在は経営戦略本部長としてグループ全体の事業計画策定プロセスの統括、東京海上グループとのビジネス協業分科会の統括を担い、ID&Eグループ全体で社会課題の解決と持続的な成長を両立を目指す。

  • 日本工営株式会社国土基盤整備事業本部シニアスペシャリスト

    藤原民章 (ふじわら たみあき)

    国土保全事業部防災部長などを歴任。現在はシニアスペシャリストとして全国各地の土砂災害、地すべり対策等業務を多数実施。海外の現地技術者の育成にも携わり、安心・安全な社会の実現を目指す。

  • 【モデレーター】
    ID&Eホールディングス株式会社上席執行役員サステナビリティ推進本部長

    植嶋卓巳 (うえしま たくみ)

    独立行政法人国際協力機構(JICA)で40年国際協力に従事後、当社に入社。当社サステナビリティ推進本部長としてID&Eグループ全体のサステナビリティ経営の推進を統括し、ミッションである「世界をすみよくする」ならびに持続可能な社会の実現に取り組む。

─ID&Eが描く、災害に強く持続可能な社会への挑戦─

世界各地で激甚化する気候災害、切迫する大地震、災害はもはや「想定外」では済まされない時代に入りました。
災害レジリエンス──それは単なる防災ではなく、被害を最小限に抑え、迅速に回復する力。この力を社会にどう届けるかが、今まさに問われています。

ID&Eグループは、長年にわたり災害対応の最前線で技術と知見を磨き続けてきました。専門技術者による現場対応、国内外160か国に広がるネットワーク、そして東京海上グループとの連携による保険と技術の融合──これらを通じて、災害に強く、持続可能な社会の実現に挑んでいます。

本記事では、長年にわたり災害と向き合ってきた2人の専門家に、災害レジリエンスの本質と、ID&Eが果たすべき役割について聞きました。

「災害レジリエンス」とは何か──サステナビリティとの接点

植嶋

これまでID&Eのサステナビリティの方針には「災害レジリエンス」は明示されていませんでしたが、東京海上グループとの融合を機に、ターゲットの一つとして明確に掲げることを決めました。改めて、災害レジリエンスとは一体どういった概念なのでしょうか。

炭田

災害レジリエンスとは、単なる防災・減災にとどまらず、「被害を完全に防ぐことは難しい」という前提に立ち、被害を最小限に抑え、できるだけ早く元の状態、あるいはより良い状態へと回復する力を指します。短期的な対応力であるレジリエンスは、長期的な持続可能性を目指すサステナビリティの中に内包されるべき重要な要素です。特に想定外の災害が増えている昨今においては、個人・地域・企業が主体的に関わることがますます求められています。

藤原

能登半島地震では、発災直後から現場に入りましたが、復興が進まず、発災から1年経過しても街がゴーストタウン化している現実を目の当たりにしました。東日本大震災でも同様に、避難した住民が戻れない状況が続いています。今までは一つの災害が発生した場合、それを防災・減災という切り口で対応してきましたが、様々なことを時間軸で考えなければいけないのではないかと気づかされました。その際、単なるハード対策だけで済ませるのではなく、多くの関係者の方々と関わりながら、地域としての復興や「ビルド・バック・ベター(より良い復興)」の思想を取り入れていくことが不可欠です。

植嶋

持続可能な状態をつくる「サステナビリティ」、そして迅速により良い状態に戻す「レジリエンス」は、一体不可分ということですね。

能登半島地震で崩落した現場

技術と連携が生む、ID&Eグループの強み

植嶋

災害対応におけるID&Eグループの競争優位性は何でしょう?

炭田

まず、技術力と実績に裏打ちされた「圧倒的な総合力」です。河川や地質、防災、交通・都市計画などの分野に精通した専門技術者を擁し、国内はもちろん、世界160か国での事業経験を持っていることは、他の企業にはなかなか真似できない強みではないでしょうか。特に防災・減災やインフラ整備に関する豊富なコンサルタント実績は、他社と一線を画していると感じています。
次に、グループの構成そのものが挙げられます。都市空間やエネルギー分野に加え、東京海上グループの一員となったことで、保険という視点も含めた「総合的なソリューション」が提供できるようになりました。これは、単なる建設コンサルタントにとどまらず社会課題に対して多面的にアプローチできる、唯一無二の価値だと考えています。

技術が守る命──八ッ場ダムをはじめとした災害対応

藤原

私たちは、八ッ場ダムの建設に伴う多岐にわたる業務に関わっていましたが、あの現場も総合力が活かされた事例といえるでしょう。八ッ場ダムは、反対運動や裁判など多くの課題を抱えた公共事業でしたが、地元の「早く造ってほしい」という声に応える形で、国土交通省は信念を持って進めていました。完成後は観光施設も整備され、地域の活性化にもつながっています。
八ッ場ダムの役割の一つは治水でした。工事を終えた令和元年の台風では、試験湛水中だった八ッ場ダムが利根川上流の水を受け止め、下流の氾濫を防ぎました。私はその時、現場で試験湛水の管理に関わっていましたが、雨で一気に水位が上がったにもかかわらず、我々が計画した斜面対策工が機能したことで、特に問題は発生しなかったのです。大量の河川水を受け止めて被害を防いだことに、技術者として感慨深いものがありました。このプロジェクトには様々な視点や批判もありましたが、結果的に多くの人々の命や財産が守られたのだと実感しています。「自分たちがやってきたことは間違っていなかった」と強く感じました。

炭田

ダム建設では、通常、試験湛水において漏水や変位の有無を確認しながら慎重に水位を上げていきます。しかし、台風によって一気に水位が上昇した際にも、八ッ場ダムがびくともしなかったのは、技術力の高さを証明する一つの事例です。 一方で、日本工営が関わった岡山県・小田川の河川改修では、計画中に洪水が発生し、約50名の尊い命が失われました。もう少し早く完成していれば救えた命かもしれないという悔しさは、今も忘れられません。だからこそ、早期の復旧・復興に取り組み、同様の災害が再び起きても安全に暮らせるようにすることが、私たちの使命だと考えています。

八ッ場ダム

土砂災害への対応──繰り返される災害にどう向き合うか

植嶋

災害対策は実に幅広いですが、ID&Eが長年取り組んできた代表的な取り組みの一つが、地すべり対策や砂防事業だと認識しています。

藤原

はい。地すべり対策事業や砂防事業は、基本的に土砂災害への対応です。斜面が崩れることで地域に甚大な被害をもたらすため、対策を怠ると同じ場所で何度も災害が発生し、地域が継続的にダメージを受けることになります。私たちはそのような地域に対して、調査を行い、対策工を計画・設計しています。

植嶋

ダムや地中の動きを監視するだけでなく、被災する可能性のある人々の命や暮らしに目を向けながら、費用対効果の高い対策を立案する必要があるかと思います。こうした判断には、技術者としての経験が求められるのではないでしょうか。

藤原

そうですね。特に公共事業として行う場合、どこまで費用をかけるかのバランス感覚が重要です。こういったことは基準書や法律では明記されていないため、お客様と丁寧にディスカッションを重ねながら、予算や安全確保を考慮し、最適な方向性を定めていく姿勢を大切にしています。

国内外で広がるレジリエンスのフィールド

植嶋

災害レジリエンスの重要性は、国内にとどまらず国際的にも高まっています。現状について、どのような認識をお持ちですか。

藤原

ASEAN諸国では経済発展が進む一方で、防災対応はまだこれからという段階です。石破茂総理(当時)がASEAN諸国を訪問された際、防災協力の強化が確認されました。これにより、各国の政府や企業に対して、日本の技術を展開する機会が広がっています。私たちも現地で貢献できるフェーズが増えていると感じています。

炭田

日本では災害レジリエンスが国家戦略の一つとして位置づけられており、国土強靭化基本法のもと、内閣官房を中心に政策が推進されています。県や市町村も含め、国全体でレジリエンス向上に取り組んでおり、ID&Eもその流れに沿って技術支援を行っています。また、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)にも参画し、最新技術を活用した災害対策の推進にも取り組んでいます。

民間企業への展開──保険と技術の融合による新たな価値提供

植嶋

ID&Eは公共事業だけでなく、民間企業への展開にも力を入れています。東京海上とのグループ連携を通じて、どのような価値を提供していくことができるのでしょうか。

炭田

民間事業者向けの防災・レジリエンス分野での提供価値を高めることは、東京海上との連携における重要な目的の一つです。特に「民間防災」の領域では、企業のBCP(事業継続計画)支援をはじめ、避難誘導やリスク評価など、ソフト面にも幅広く対応しています。こうした分野には、まだ顕在化していない潜在的なニーズが数多く存在しており、今後確実に拡大していくと見込んでいます。

藤原

民間企業にとって、初期投資と災害後の復旧時が重要なタイミングです。公共事業とは異なり、企業は20~30年のキャッシュフローを前提に意思決定を行います。保険でカバーできる部分もありますが、できない部分には技術的なアプローチが必要でしょう。東京海上との連携により保険と技術を組み合わせたトータルソリューションを提供できるのが、私たちの強みです。

未来への展望──「災害レジリエンス」を世界へ

植嶋

ID&Eが今後どのような価値を提供していくべきか、未来への展望をお願いします。

炭田

予防・対応・保証・復旧という全プロセスを、ワンストップで総合的に提供できるのが、私たちの特長です。東京海上との連携により、保険と工学技術を融合させた新しいソリューションの開発にも取り組んでいます。また、人手不足を補うためにデジタルとリアルを融合させた技術の進化にも力を入れており、社会に新たな価値を届けることが私たち の使命だと考えています。このように、私たちは「災害に強い社会」の実現のその先にある、「災害を乗り越え、より良く再生する社会」の構築を長期的なゴールに見据えています。

藤原

各国の人々が自分たちの力で災害から命と暮らしを守れるよう、意識改革と人財育成を進めていきたいです。海外ではリソースが不足しているため、現地で対応できる技術者を育てることが重要です。日本工営のネットワークと東京海上の拠点を活用し、保険と技術をセットにして展開することで、持続可能な仕組みを構築していきたいと思います。

国土保全-斜面防災・砂防に関する取り組み

日本工営では、土砂災害が多発する日本で、調査・設計・モニタリングを通じ防災力を強化し、安全・安心な社会の実現に貢献しています。

斜面防災(地すべり対策) 参画事例:由比地区地すべり対策事業

•静岡市清水区由比西倉沢において、大規模な地すべりの地形が確認されました。
•この地域には、重要な交通網が集中し、地すべりが発生した場合には、人的被害に加え、東西を結ぶ交通網の寸断による経済被害が予測 されるため、2005年度から国土交通省直轄事業として、豪雨や地震などによる地すべり発生を未然に防ぐための地すべり対策事業が行われています。

本対策事業の保全対象(※1)
•地すべり崩落土砂により、被害想定範囲内の施設は埋没、また、重要交通網のJR東海道本線・国道1号・東名高速道路などの長期間途絶により、地域はもとより、日本経済全体への影響が懸念されます。

想定被害家屋 44戸 (うち3戸は事業所)
交通途絶による影響台数 約8万台/日
鉄道途絶による影響人数 約2.5万人/日
鉄道貨物の影響 約76万km・トン/日
※国土交通省 中部地方整備局作成資料を参照し、作成。
※1:出典:中部広域連絡サバイバル対策審議資料
https://www.cbr.mlit.go.jp/kikaku/llgyou/data/r0612/shiryo_06_2.pdf (p.3、10)
地すべり図

地域と築く持続可能な防災への取り組み

地域のネットワークや自然資源、地域知見などを活かした防災とエネルギーの統合的な仕組みの構築・運用を通じて、持続可能で安心な暮らしの実現に貢献しています。

“日常が訓練”になる津波避難複合施設 〜伊豆市の防災観光モデル〜

津波避難複合施設「テラッセ オレンジ トイ」

日本工営都市空間は、静岡県伊豆市土肥地区で全国初の津波災害特別警戒区域における防災まちづくりを推進しました。松原公園内に整備した津波避難複合施設「テラッセ オレンジ トイ」は、平時は観光拠点、災害時は避難所として機能し、日常利用が防災訓練となる仕組みを導入。市民参加型の計画と地域連携により、防災意識を高めながら観光振興を両立し、災害に強くレジリエンスを備えた持続可能な地域社会の実現に貢献しています。

地域のエネルギー運用を支える阿寒マイクログリッド 〜酪農と再エネの共生モデル〜

蓄電システム/エネルギーマネジメントシステム

日本工営エナジーソリューションズは、北海道釧路市阿寒町で地域のエネルギー自立と災害時のレジリエンス強化を目指す「阿寒マイクログリッド構築事業」プロジェクトに参画。太陽光やバイオガス発電、蓄電池を活用し、平時は酪農施設の電力効率化を図り、災害時は外部電力に頼らず供給を継続することが可能です。さらにノンファーム接続で余剰電力の売電を可能にし、経済性と持続可能性を両立。地域産業と再生可能エネルギーを融合した先進モデルとして、災害に強く環境に配慮した地域社会の実現に貢献しています。

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